月次決算で売上や利益の未達が分かっても、それだけでは次の打ち手は決まりません。PLは「何が起きたか」を示す表であり、「なぜ起きたか」や「次に何を変えるか」までは教えてくれないからです。

そこで必要になるのがKPIです。PLで差が出た場所を見つけ、その差を顧客数、単価、粗利率、稼働時間などの途中の数字に分解すると、会議で扱う論点が具体的になります。

PLだけでは次の一手が決まらない

たとえば、月間売上の計画が3,000万円、実績が2,700万円だったとします。300万円の未達ですが、考えられる理由は一つではありません。

  • 顧客数が計画より少なかった
  • 平均単価が下がった
  • 受注はしたが売上計上が翌月にずれた
  • 解約や返品が増えた
  • 商品構成が変わり、単価の低い売上が増えた

「売上が300万円足りない」というPLの情報だけでは、営業を増やすべきか、価格を見直すべきか、計上時期を確認すべきか判断できません。

最初にPLで、差が出た場所を絞る

月次会議では、PLのすべての行を同じ深さで確認する必要はありません。まず、計画や前年と比べて影響が大きい項目を絞ります。

  • 売上:数量、単価、売上計上の時期に問題がないか
  • 粗利:値引き、原価、商品構成が変わっていないか
  • 人件費:採用時期、残業、外注費との振り替えがないか
  • その他の費用:一時的な支出か、今後も続く支出か
  • 営業利益:売上の問題か、粗利の問題か、固定費の問題か

経理や管理部門は、まず数字が正しいことと、前年差・計画差の大きい項目を明らかにします。この段階で原因まで断定する必要はありません。事実と原因の仮説を分けることが大切です。

次にKPIで、差が生まれた場所を探す

PLの差を、事業の構造に合わせた計算式へ分解します。

売上の基本的な分解は、次の形です。

  • 売上 = 顧客数 × 平均単価
  • 新規売上 = 商談数 × 受注率 × 平均単価
  • 継続売上 = 既存顧客数 × 継続率 × 平均単価
  • 店舗売上 = 来店客数 × 購入率 × 客単価
  • 粗利 = 売上 × 粗利率

どの式を使うかは、業種や事業モデルによって異なります。重要なのは、会議で変えられる数字まで分解することです。

たとえば、売上未達の理由が「受注件数の減少」まで分かったとしても、まだ行動にはつながりません。さらに、商談数が少ないのか、受注率が下がったのか、案件の進行が遅れたのかを確認します。

月次レビューでは、この順番で確認する

1. 実績と着地見込みを分ける

すでに確定した実績と、今後の見込みを混ぜないようにします。月の途中であれば、現時点の実績だけでなく、月末や四半期末の着地見込みを確認します。

2. 重要な差を二つか三つに絞る

差額が大きいもの、今後も続く可能性があるもの、経営判断が必要なものを優先します。すべての差異を会議で説明すると、報告だけで時間が終わります。

3. KPIまで分解する

売上、粗利、費用の差を、件数、単価、率、人数、時間などに分けます。数字が取れない場合は、今後どのデータを残す必要があるかも決めます。

4. 事実と仮説を分ける

「受注率が下がった」は事実です。「提案の質が落ちた」は原因の仮説です。仮説を事実のように扱わず、確認方法を決めます。

5. 次回確認する数字まで決める

アクションは「営業を強化する」では不十分です。誰が、いつまでに、何を行い、どの数字で結果を見るのかを決めます。

  • 担当者
  • 期限
  • 実施すること
  • 次回確認するKPI
  • 想定どおりでなかった場合の対応

具体例:売上300万円の未達をどう扱うか

月間売上が計画3,000万円に対して2,700万円だったとします。確認したところ、平均単価は計画どおりでしたが、受注件数が10%少なく、特に月後半の受注率が下がっていました。

さらに案件を確認すると、新しく配属された担当者の提案が遅れ、上司の確認待ちになっている案件が複数ありました。

この場合、会議で決める内容は次のようになります。

  • 対象案件を5件に絞る
  • 営業責任者が提案内容を翌営業日までに確認する
  • 担当者ごとの提案提出数と受注率を週次で確認する
  • 翌月の月次レビューで、受注率と案件滞留日数を検証する

売上未達という結果を、受注件数、受注率、案件滞留というKPIまで分解したことで、具体的な行動が決まりました。

立場ごとに見るポイントは違う

経営者

細かいKPIをすべて追うのではなく、利益や資金に与える影響が大きい差と、経営判断が必要な論点を確認します。採用、値上げ、投資、撤退など、部門だけでは決められない事項を引き取ります。

経営企画・事業企画

PLと各部門のKPIがつながっているかを確認し、着地見込みをそろえます。営業、開発、管理部門で前提が違う場合は、数字の定義と更新時点を合わせます。

経理部長・管理部門責任者

正しい数字を早く出すだけでなく、経営が判断しやすい差異を示します。ただし、現場の原因を推測で断定せず、事実、確認したい点、経営への影響を分けて伝えます。

若手担当者

集計した数字について、「どのデータから作ったか」「前月から何が変わったか」「差額の主な要因は何か」を説明できる状態を目指します。分からない原因は無理に埋めず、確認すべき質問として残します。

よくある失敗

  • KPIを増やしすぎて、重要な変化が埋もれる
  • 数字の正しさの確認だけで会議が終わる
  • 原因の仮説を、確認済みの事実として扱う
  • 「注力する」「改善する」だけで担当と期限がない
  • 一時的な差と、毎月続く構造的な差を混ぜる

KPIは多いほど管理が細かくなるわけではありません。会議で判断や行動に使わない指標は、参考資料へ下げるか、確認頻度を減らします。

会議で使える五つの質問

  • PLのどの項目が、利益に最も大きな影響を与えたか
  • その差を説明するKPIは何か
  • 一時的な差か、来月以降も続く差か
  • 今月中に変えられることは何か
  • 次回の会議で、どの数字を見れば結果が分かるか

PLとKPIをつなぐ目的は、精密な分析資料を作ることではありません。経営と現場が同じ数字を見て、次に何を変えるかを決めることです。まずは重要な差を一つ選び、途中の数字まで分解するところから始めると、月次会議の質が変わります。